北村周一のブログ《フェンスぎりぎり》

フラッグ《フェンスぎりぎり》展へようこそ。現代美術紹介のコーナーです。とりわけ絵画における抽象力のリアルについて思考を巡らしたい。またはコーギーはお好き?

2013-01-01から1年間の記事一覧

50 ふるさとは例えば路地の片かげり北に海もつ町は気だるく

短歌楽第五十号刊。夏の記憶、あれこれ三首。 ふるさとは例えば路地の片かげり北に海もつ町は気だるく 欄干にゆびの爪など擦りつつわたる石橋 川向こうまで 天降る神の子のごと嫋やかに野道を来たり 愛されたくて

49 声のみの夕蝉の声こつねんと谺は無口な少年を追う

短歌楽第四十九号刊。ホザンナとは、救い給えの意。以下三首詠。 父母と別れてひとり告解へ罪の赦しは共にひとしく 天のいと高き処に幸あれと祈り続ける祈るべき人 声のみの夕蝉の声こつねんと谺は無口な少年を追う

48 わが胸に連なり来たる木立ありてホウシツクツク罪説く時間

短歌楽第四十八号刊。夏の終わりは、能登の夕暮れ、以下三首。 わが胸に連なり来たる木立ありてホウシツクツク罪説く時間 山ひとつ時雨れ鳴く見ゆおおいなる蝉が神父の声まねており 透き通るほどのうすずみその翅のいろに昏れゆくカナカナの声

47 われに手を翳したる者ききなれし声に囁く小窓を開けて

短歌楽第四十七号刊。いちど憶えたら忘れないうたのかずかず、をうたう。以下三首。 われに手を翳したる者ききなれし声に囁く小窓を開けて われと知る誰か見ておりホーザンナ塔より高きところを仰ぐ 川の面をわたるうつしみくらぐらとありて漂う橋のかたえを

46 みみもとに残る余韻は引き綱におさめつつあり ミサが始まる

短歌楽第四十六号刊。カトリック清水教会に通いしころのことごと、三首。 みみもとに残る余韻は引き綱におさめつつあり ミサが始まる 日曜の朝を空しく鳴くセミの声をしずめに教会へ入る 塔の下に笑みもてしばし集い来し信者らの声 鐘鳴るなかを

45 同窓会の通知手にしてなにがなしおもうことあり 根に持つごとく

短歌楽第四十五号刊。同窓会の巻、三首。残念ながら行った事がないけど。 同窓会の通知手にしてなにがなしおもうことあり 根に持つごとく たまたまに小、中、高の各々より案内来ており 華甲の宴 上級生の吐息が重い 裏切るな 捩じ曲げられたる人差し指に

44 招かざる客かよひとりさむざむとエアコンの口あおげるおれは

短歌楽第四十四号刊。夏の終わりをうたおうの巻、都合三首。 招かざる客かよひとりさむざむとエアコンの口あおげるおれは 図書室の歌誌をひらけば黒髪のしおりがひとすじ夏ページにて ねてはさめさめてはみいる銀幕の繋がるまでの撓める時間

43 銀行のカレンダーにて親しむる日本画日本人の美意識

短歌楽第四十三号刊。量と質の調和を目指す、三首詠。 銀行のカレンダーにて親しむる日本画日本人の美意識 壁一面所狭しと絵がならびさらに貼りつく金銀の短冊 サヨウナラかかるタイトル掲げては個展たびたびひらく画家おり

42 目には青葉 響動めき渡る万歳のこえはどこから武道館前

短歌楽第四十二号刊。晴れ晴れと、五月をうたう、なにはともあれ三つ。 目には青葉 響動めき渡る万歳のこえはどこから武道館前 こころせよだれが言ったか象徴の人は別段何もいわない 相模原上空を飛ぶ人民機かくもすずしき高度を保つ

41 臘月やバックしますの電子音ちぢにみだれて路上を塞ぐ

短歌楽第四十一号刊。季節はずれの、12月をうたう、三首。 臘月やバックしますの電子音ちぢにみだれて路上を塞ぐ 日捲りをめくりわすれていちどきに破らんとするに力の籠れる ロマンスカー一駅とおく乗り越してありく家路はせつなく遠し

40 夾竹桃 ふたいろあわく入り混じるその花かげに求め合う肌

短歌楽、第四十号刊。 劇画調なれど晩夏をうたう、とまれ三首。 夾竹桃 ふたいろあわく入り混じるその花かげに求め合う肌 ストレート・ノー・チェーサーと決めていた狂えるほどに冷静に 夏 線路沿いのフェンスにおまえを押しつけて過ぎる電車の影をゆれあう

39 この辺りに産婆なるひと住まいたり 母とわれとを取り上げし人

短歌楽第三十九号刊。能登の夏をうたう、いつもの三首。下、琵琶湖を望む。 この辺りに産婆なるひと住まいたり 母とわれとを取り上げし人 浦山の社のわきの細き道上るわがあり 母生れし町 じわりじわり昇り詰めつつ奥能登に盆の踊りの夜のめぐり来

38 おおいなる木々の一部におもわれて斎場わきの雑木林も

短歌楽第三十八号刊。斎場をうたう、月並み三首。 おおいなる木々の一部におもわれて斎場わきの雑木林も 斎場の裏てをつづく舗装路の途切れしところ川へと下る 斎場と運動場をへだてたる汚水処理場いつしかに消ゆ

37 この墓は厭だと言った義父さんがさいしょのひととなって納まる

短歌楽第三十七号刊。葬儀関連その他、三首。 この墓は厭だと言った義父さんがさいしょのひととなって納まる あたまに老人とある病院とホームを行き来しつつ暮れゆく 特養に空きの出でしを聞きながらおもい途切れてあふれだすきみ

36 寒すぎて暖かすぎて早すぎてそれでもたいへんよく咲きました。

短歌楽第三十六号刊。つづけてさくら三首詠。 寒すぎて暖かすぎて早すぎてそれでもたいへんよく咲きました。 暗く長い筒のさきっぽ慣れし目に出口まばゆし天城を越ゆる 半島のさきの先までのさくらかなさまざまありて菜の花畑

35 桜見にちょっとそこまで 漕ぎ手なきふらここ揺れる園にそいつつ

短歌楽第三十五号刊。桜をうたう、季節はずれはご容赦を、以下三首。 桜見にちょっとそこまで 漕ぎ手なきふらここ揺れる園にそいつつ 雨戸繰るたびに見上げることすでに義務のごとありさくら満開 綾取りの母と子のおり、枝垂れ咲くはなのこかげに父を忘れて

34 直植えはちがうやっぱり勢いが、トマトいきいき隣家の庭に

短歌楽、第三十四号刊。家庭菜園はたのしいぞの巻、三首詠。 直植えはちがうやっぱり勢いが、トマトいきいき隣家の庭に 鉢植えの柚子の木その実ここのつを数えながらに番号を呼ぶ ビール漬けワイン漬けあり。わが手練手管の果てに蛞蝓は果つ

33 窗のない夢を溶け出す数ばかり増しゆくそれは雨滴(泣きたい)

短歌楽、第三十三号刊。闘えば闘うほど、怖れは肥大するらしい、とまれ三首。下、滋賀県は近つ淡海のノラ。 窗のない夢を溶け出す数ばかり増しゆくそれは雨滴(泣きたい) パレードの帰り道にもてんつくてんひとりはぐれて叩く小太鼓 ポピュリズムかなしき史…

32 少年の腰のベルトに吊るされて揺れるミッキー・マウス ぼくもだ。

短歌楽、第三十二号刊。キャラクター・グッズ紹介の巻。以下三首。 近江八幡 少年の腰のベルトに吊るされて揺れるミッキー・マウス ぼくもだ。 同郷の「まる子」を囲みてわが夫婦しばし悲しむ、連載終わる 乾電池盗む癖ある少年の夢は自室でアトム飼うこと

31 葉枯れせし遮光カーテンまなび舎の屋根まで伸びてヘチマとなりぬ

短歌楽、第三十一号刊。学校をうたう、三首詠。 葉枯れせし遮光カーテンまなび舎の屋根まで伸びてヘチマとなりぬ 小さき虫耳のなかより出ださんに 生徒昇降口の明るさ けたたましき米軍ヘリを貶めるごとく君蹴るシュートの行方

30 小さなる手のつぎつぎにあらわれてうすももいろの夕日を囲む

短歌楽、第三十号刊。科学のちからを省みるこのごろ、いろいろの三首。 小さなる手のつぎつぎにあらわれてうすももいろの夕日を囲む 灰色に凭りかかられて空色あり とおい遠い画面の底に原子炉 青は水、熱き湯は赤 捻るたびに蛇口の口をぬるまゆは出づ

29 やさしかりし祖父の名を持つしらす舟熊吉丸は清水のみなと

ひきつづき短歌楽、第二十九号刊。清水港をうたう、三首詠。 やさしかりし祖父の名を持つしらす舟熊吉丸は清水のみなと 海を背に網繕える祖父にしてかえし来す笑みまぶしかりけり 日酒ちびりちびりとやるは老いびとの特権にして漁師の午後は

28 トロフィーが表通りに向けられて海士町山中毅の実家

短歌楽、第二十八号刊。オリンピックをうたおうの巻、以下三首。 トロフィーが表通りに向けられて海士町山中毅の実家 お笑いに出るを目指してがんばったと五輪選手が目かがやかせいう 至近距離に見ている者の判定があっけなく覆されてTHE END

27 娘はきょうも帰り来ぬらしカボチャばな受粉済ませし雄花は摘むも

短歌楽、第二十七号刊。ハブラシのうた、その他三首。 娘はきょうも帰り来ぬらしカボチャばな受粉済ませし雄花は摘むも 娘とふたりかがみを前にならび立ちくちにハブラシ動かしており カルチャーを無断欠席したあの日、ハブラシの詠は日の目見ざりき

26 ホンキャベツムラサキキャベツハナキャベツメキャベツメハナキャベツ同根

短歌楽、第二十六号刊。メキャベツのうた、思いつくままに三首。不思議なメキャベツの写真とともに。 ホンキャベツムラサキキャベツハナキャベツメキャベツメハナキャベツ同根 青汁を身にみたしめてモンシロの子らは横たう葉うらのうえを 虫虫の供養を兼ねて…

25 うたた寝の学芸員も蝋の火を描きつづけし画家の名は知る

短歌楽、第二十五号刊。かくて絵のような日常をうたう、月並み三首。 うたた寝の学芸員も蝋の火を描きつづけし画家の名は知る 画材購うために売りゆく絵のひとつ脇に抱えて【ジグザグ】の道 紙と木の家のくらしはままならず夢のなかでもわが子を叱る

24 海賊の舟の丸窓くもり出し波より高き憎悪にしずむ

短歌楽、第二十四号刊。時の巡りをうたう、つれづれ三首。 海賊の舟の丸窓くもり出し波より高き憎悪にしずむ エピグラムその切れ味を試さんにしばしラインを越えて漂う 入隊後二、三センチは伸びるらし 朝鮮人民軍兵士の背丈は

23 谷崎は鉄道病と名付けしがパニック障害病む時は病む

短歌楽、第二十三号刊。乗り物をうたう、以下三首。車窓風景付き。 谷崎は鉄道病と名付けしがパニック障害病む時は病む 鶴見線の国道駅か安善駅のガード下なら良い店がある いつのまにか家の南に新幹線北に東名 五輪の前後

22 ひと作業のこして息を吐く妻の、「介護から得るもの何もない」

短歌楽、第二十二号刊。おなじみ日々の出来事、三首詠。 下の写真は、雪の中央本線、車窓より。 ひと作業のこして息を吐く妻の、「介護から得るもの何もない」 産廃と老後の施設は隣り合いさねさしさがみ田名がひろがる あわあわと口の奥より出す声はやすら…

21 銀座シネパトス横目にひたひたと地下道を行く三原橋地下

短歌楽、第二十一号刊。絵のような日常、三首詠。 下の写真は、大阪の国立民俗学博物館で撮影したもの。そのひとコマ。 銀座シネパトス横目にひたひたと地下道を行く三原橋地下 磔刑図さらに笞刑図読み方をたがえしのちのわれの饒舌 うすい胸尖りし肩を水槽…