三百十六日目。はや大晦日。 賑やかに大掃除に励む、向かいのパン屋さん一家。 新と旧のゴルトベルクのＣＤが届けりピアノは高橋悠治

三百十五日目。師走晦日。町がいくぶん静けさを取り戻した。 描きかけの素描が三つ四つばかりならぶ教室 入試間近し

三百十四日目。歳末、何かと気ぜわしいこの頃です。 立ち並ぶ石膏像に入り日差し白と黒とのデッサンは朧

三百十三日目。何やら身の回りがあわただしくなってきたようだけれど。 石膏の像のかたえに三脚を置いてましろき木炭紙立たす

三百十二日目。きょうは少し寒い。 グラウンドを二分しており。サッカーと野球チームの声はまだらに

三百十一日目。こんなにあたたかくてよいのだろうか。 ダイスケがサッカーやっていたならと あのカズ以上だったろうとも

三百十日目。聖誕祭。静かで穏やかな年の暮れでありますように。 甲子園に出たことのある遊撃手山下さんのクラスはこっち

三百九日目。メキシコオリンピック、遠い昔の話。 校庭にボール蹴る音 メキシコの五輪を終えたる『杉山』が来ぬ

三百八日目。なぜか祝日、年の瀬の旗日。 オニを色で別ける風習古来よりありて俯く子オニだれの子

三百七日目。寒いと体力の消耗が早い。 電池切れの五歳児あわれ空腹のアトムよろしく家路をいそぐ

三百六日目。あすは冬至です。 きみを連れてコンビニの前を過ぎゆくとき弾むほっぺはゆうぐれの中

三百五日目。一人ずつ、身近に居るひとが消えてゆく。 元気？ああお前は？とこたえくる友は小・高・大の一つセンパイ

三百四日目。巷はクリスマスカラー一色。 つみれ汁を人参いろに染め上げて刻み柚子など、黄葉弾む

三百三日目。カキがふっくらと美味しい季節。 臘月や 牡蠣という字を書けるかと問われいるなりアール（ｒ）付く月

三百二日目。車内風景。いつもと変わらぬ年の瀬のようにみえて。 年賀状と電子メディアの広告が零れんばかりに車内満載

三百一日目。タイヤを冬用に替える。雪が心配。 思春期の脳はかすかに甘きかな 暖冬の夜の地下鉄に酔う

三百日目。車内風景。 間断なく咳する人をななめ読みに見ては下向く乗客のひとり

二百九十九日目。奇跡の星は孤独の星でもある。胸のすくような夕映えみたしめて痛きまで青き星が瞬く

二百九十八日目。暖冬。過ごしやすいけれど。 散歩の日々、その数か月後。 瀟洒なる「ホーム」のあかり 食堂のテレビ見ているおばあさんたち

二百九十七日目。散歩の日々、つれづれ。 ここかつて林なるらん 介護付きホームのうらにオーナーは住む

二百九十六日目。散歩の日々。天気の移り変わりが早い。 エントランスにグランドピアノ 年金をはるかに凌ぐ利用費は見ゆ

２９５日目。散歩の途中でのことごと。 テラス付きレストランあり オープンを間近に控えし介護の施設の

二百九十四日目。躓かぬように。 歩くことと考えることは同一の平面上の左右の足だ

二百九十三日目。針供養の日。 通過待ちのホームから見る急行の車内はなべて真空である

二百九十二日目。大雪。何かと気ぜわしくなりました。 急行が通過するとき各駅の車内は一瞬時間が止まる

二百九十一日目。画廊にいる時間よりも電車に乗っている時間のほうがずっと長い。 上り四首下りに十首余りなるおうた拾って絵を見て帰りぬ

二百九十日目。 袖口や襟元にまでも染みつけて宴会帰りの父にお仕置き

二百八十九日目。 保育園に行き渋る娘を境内につれきてしかるおどすかなしむ

二百八十八日目。アマメハギは、石川県輪島市の重要無形民俗文化財だそうです。 水木しげる氏描く妖怪のひとつでした。合掌。 あまめはぎが出るぞといいてわが娘をば叱りきしばしば東雲寺にて

二百八十七日目。希望の朝も。 眼も開かぬ子犬を見捨てた罰なのでしょうか新しい朝はお預け