2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧
短歌楽第三十八号刊。斎場をうたう、月並み三首。 おおいなる木々の一部におもわれて斎場わきの雑木林も 斎場の裏てをつづく舗装路の途切れしところ川へと下る 斎場と運動場をへだてたる汚水処理場いつしかに消ゆ
短歌楽第三十七号刊。葬儀関連その他、三首。 この墓は厭だと言った義父さんがさいしょのひととなって納まる あたまに老人とある病院とホームを行き来しつつ暮れゆく 特養に空きの出でしを聞きながらおもい途切れてあふれだすきみ
短歌楽第三十六号刊。つづけてさくら三首詠。 寒すぎて暖かすぎて早すぎてそれでもたいへんよく咲きました。 暗く長い筒のさきっぽ慣れし目に出口まばゆし天城を越ゆる 半島のさきの先までのさくらかなさまざまありて菜の花畑
短歌楽第三十五号刊。桜をうたう、季節はずれはご容赦を、以下三首。 桜見にちょっとそこまで 漕ぎ手なきふらここ揺れる園にそいつつ 雨戸繰るたびに見上げることすでに義務のごとありさくら満開 綾取りの母と子のおり、枝垂れ咲くはなのこかげに父を忘れて
短歌楽、第三十四号刊。家庭菜園はたのしいぞの巻、三首詠。 直植えはちがうやっぱり勢いが、トマトいきいき隣家の庭に 鉢植えの柚子の木その実ここのつを数えながらに番号を呼ぶ ビール漬けワイン漬けあり。わが手練手管の果てに蛞蝓は果つ
短歌楽、第三十三号刊。闘えば闘うほど、怖れは肥大するらしい、とまれ三首。下、滋賀県は近つ淡海のノラ。 窗のない夢を溶け出す数ばかり増しゆくそれは雨滴(泣きたい) パレードの帰り道にもてんつくてんひとりはぐれて叩く小太鼓 ポピュリズムかなしき史…
短歌楽、第三十二号刊。キャラクター・グッズ紹介の巻。以下三首。 近江八幡 少年の腰のベルトに吊るされて揺れるミッキー・マウス ぼくもだ。 同郷の「まる子」を囲みてわが夫婦しばし悲しむ、連載終わる 乾電池盗む癖ある少年の夢は自室でアトム飼うこと
短歌楽、第三十一号刊。学校をうたう、三首詠。 葉枯れせし遮光カーテンまなび舎の屋根まで伸びてヘチマとなりぬ 小さき虫耳のなかより出ださんに 生徒昇降口の明るさ けたたましき米軍ヘリを貶めるごとく君蹴るシュートの行方
短歌楽、第三十号刊。科学のちからを省みるこのごろ、いろいろの三首。 小さなる手のつぎつぎにあらわれてうすももいろの夕日を囲む 灰色に凭りかかられて空色あり とおい遠い画面の底に原子炉 青は水、熱き湯は赤 捻るたびに蛇口の口をぬるまゆは出づ
ひきつづき短歌楽、第二十九号刊。清水港をうたう、三首詠。 やさしかりし祖父の名を持つしらす舟熊吉丸は清水のみなと 海を背に網繕える祖父にしてかえし来す笑みまぶしかりけり 日酒ちびりちびりとやるは老いびとの特権にして漁師の午後は
短歌楽、第二十八号刊。オリンピックをうたおうの巻、以下三首。 トロフィーが表通りに向けられて海士町山中毅の実家 お笑いに出るを目指してがんばったと五輪選手が目かがやかせいう 至近距離に見ている者の判定があっけなく覆されてTHE END
短歌楽、第二十七号刊。ハブラシのうた、その他三首。 娘はきょうも帰り来ぬらしカボチャばな受粉済ませし雄花は摘むも 娘とふたりかがみを前にならび立ちくちにハブラシ動かしており カルチャーを無断欠席したあの日、ハブラシの詠は日の目見ざりき
短歌楽、第二十六号刊。メキャベツのうた、思いつくままに三首。不思議なメキャベツの写真とともに。 ホンキャベツムラサキキャベツハナキャベツメキャベツメハナキャベツ同根 青汁を身にみたしめてモンシロの子らは横たう葉うらのうえを 虫虫の供養を兼ねて…
短歌楽、第二十五号刊。かくて絵のような日常をうたう、月並み三首。 うたた寝の学芸員も蝋の火を描きつづけし画家の名は知る 画材購うために売りゆく絵のひとつ脇に抱えて【ジグザグ】の道 紙と木の家のくらしはままならず夢のなかでもわが子を叱る
短歌楽、第二十四号刊。時の巡りをうたう、つれづれ三首。 海賊の舟の丸窓くもり出し波より高き憎悪にしずむ エピグラムその切れ味を試さんにしばしラインを越えて漂う 入隊後二、三センチは伸びるらし 朝鮮人民軍兵士の背丈は
短歌楽、第二十三号刊。乗り物をうたう、以下三首。車窓風景付き。 谷崎は鉄道病と名付けしがパニック障害病む時は病む 鶴見線の国道駅か安善駅のガード下なら良い店がある いつのまにか家の南に新幹線北に東名 五輪の前後
短歌楽、第二十二号刊。おなじみ日々の出来事、三首詠。 下の写真は、雪の中央本線、車窓より。 ひと作業のこして息を吐く妻の、「介護から得るもの何もない」 産廃と老後の施設は隣り合いさねさしさがみ田名がひろがる あわあわと口の奥より出す声はやすら…
短歌楽、第二十一号刊。絵のような日常、三首詠。 下の写真は、大阪の国立民俗学博物館で撮影したもの。そのひとコマ。 銀座シネパトス横目にひたひたと地下道を行く三原橋地下 磔刑図さらに笞刑図読み方をたがえしのちのわれの饒舌 うすい胸尖りし肩を水槽…
門田 秀雄氏による、個展短評。(1995年8月刊) 北村周一展(1994年3月14日~24日/ギャラリー檜) 絵具の物質感や筆致の流露、また色彩の微妙なニュアンスや既知のフォルム、というような絵画の要素をできるだけ抑えて、しかも絵具という色彩と物質性を…
東京京橋ギャラリー檜B・Cおよびplusにて、アート・フェアⅩⅤが開催します。期間は、明日8月5日~10日まで。くわしくは、こちらへ。http://www2.ocn.ne.jp/~g-hinoki/ こんな作品を展示します。会場は、檜B・C。 タイトル;perspective lunch yellow…
短歌楽、第二十号刊。デモに参加する。続々三首。 十七万人とう声の聞こゆる 見上げゆく代々木の空は梅雨明けんとして 原色のコーンを越えては歩めざるわれら車道の際にもどされ 四十年ぶりに車道を練り歩く 良くとおる女の声をかしらに
短歌楽、第十九号刊。セルフ・ポートレイトにまつわるあれこれ、昔し話。以下三首。 へらへらと缶の蓋など撓ませて凹みいるなり ぎんいろのかお 描き直すたびに消えゆく自画像の二つ眼がわれを見返す えがかなくなりてとき経しわが顔の若きが壁に裏返したる…
短歌楽、第十八号刊。写真雑感、三首詠。 滋賀県大津の三叉路 心臓の絵図の真上に天皇の写真はありて手術へ向かう カダフィの写真の右に都知事いてパンダ二頭の記事へと続く 家族皆おなじ趣味もて皇室のごとくおさまるミニアルバムに
短歌楽、第十七号刊。日々の思い、あれこれ三首。 運にばかり頼ってみても試みにはじめしアンペア・ダウン快感 ビサギナスまでの遠さをおもうかな静けきくにのまほらの岡に 歩みつつ憤慨しつつそを口に出しつつ老いてゆくんだろうな