北村周一のブログ《フェンスぎりぎり》

フラッグ《フェンスぎりぎり》展へようこそ。現代美術紹介のコーナーです。とりわけ絵画における抽象力のリアルについて思考を巡らしたい。またはコーギーはお好き?

週一集その八 ヘルペスの信号

 

ヘルペスの信号

コンセプトあるいは決意表明にかえて

 

朝日新聞19871211日付夕刊によれば、(やや古い記事で恐縮ですが)あのヘルペスウイルスが悪さをせずに“休眠”しているあいだ、一個だけ(健気にも)働きつづける遺伝子があり、この遺伝子が他の遺伝子の活動を抑え眠らせているのではないかという仮説が発表されました。

つまり、「オフ」スイッチに相当する遺伝子が、ストレスやホルモンの変化などが引き金となって急激に増殖するウイルスを、眠らせつづける(役目を担っている)というわけです。ちなみに単純ヘルペス(唇のまわりに小さな水泡をつくる)ウイルスⅠ型は、米国人の約2/3に感染しているそうです。願わくは、「ヘルペスの信号」が活発に働きつづけるよう、みまもっていただきたいとおもいます。

以上は1989年4月ヘルペスの“”信号展におけるコメント
以下は1991年9月ヘルペスの“”信号展におけるコメント 

「オフ」スイッチは、働きつづけているか?残念ながら、その活動は鈍ってきたようです。黄色の信号が点ってしまいました。
ご存知のように、スイッチが働いていれば他の80個の遺伝子は休眠したままです。感染しても発病せずにすむわけです。くわしく知るということが元気を与えてくれる好例でしょう。もしかしたら他のいろいろなウイルスも、同じようなスイッチをもっているかもしれません。ところでヘルペスと呼ばれる病気は3種類あり、いわゆる帯状疱疹、それに単純ヘルペスⅠ型とⅡ型に分かれます。Ⅱ型はたいへん恐い病気ですが、Ⅰ型は風邪みたいなものです、けれどもウイルスが体内を素通りしてしまう人とどういうわけか残ってしまう人がいて、何度も再発の憂き目にあうのです。
(もうおわかりのこととおもいますが)、「ヘルペスの信号」においてはヘルペスではなく“信号”に意味があります。なお今回の4人によるグループ展について少し説明しますと、活動の場が近かったこと、年齢が同じ位(1951、52、53年生れ)加えて身長も同じ位、この程度の理由に依拠した発表となります。たぶん黄色のオフ信号は、これからもながくながく点滅しつづけることになるでしょう。

追記
イエローの点滅はまた、危機管理能力の有無あるいは評価をも想起させる。この先に極めて危険な領域がありそれを察知したものが回避させる。のちに、この先に「それ」があったのだといってみたとしよう。すでに平穏な状態にあれば、コトはなかったこととして認知されるだろう。病は病として、あやまちはあやまちとして「かたち」にならないと人は納得しないのかもしれない。(2002年2月8日)